つづき

いきなり放り込まれた戦場にあっけにとられていると
突然 あたり一面に雷が鳴り響きました。
それは空気まで振動させるほどの大きな音でした。


皆の目がそちらの方に向くと 戦場となっている平野の先の方に丘が見え、
雷はその丘の頂上から発せられているようでした。
そしてそこが この戦い の中心地・激戦地であるようで、
大勢の人がそちらの方に向かっていました。
私もその人たちにつられてついていきました。


丘に着くと、丘の上には聖職者のようなローブをまとった一人の男性が


 聖書を片手に神様とイエス様の聖名を語り、聖句を発していました。


発せられている声は耳を劈くような大きな音で さらにとても耳障りのする音でした。
一音一音から伝わってくる感情は怒りと傲慢さに満ちていました。
その人の怒りは凄まじく・・怒りが形になったかのように
積乱雲ほどの厚みのある黒雲をその人の頭上に
作り上げていて、その人の発する言葉が雲の中で雷となり、
その雷が散弾銃が撃たれたかのように、
周りの人すべてを傷つけていました。


そしてそこでの様を見て私はやっと この戦いが普通の戦争ではないことが
理解出来ました。
(これは地上での戦争ではなく、聖名と聖句によって人が争っていることが
 神様とイエス様にとってはこのように感じていることを見せてくれていたんだ)と。


(このような人と人の争いが神様とイエス様にとっては苦しみとなっているんだ)と。


そのことに気が付いた私は
その人に向かって、
「うるさい、だまれ、聖名を語り、聖書の言葉で
 人を傷つけるな」と、叫びました。


そう・・私は・・
精一杯の声で叫んだつもりだったのです。
ですが・・その言葉はその人とは違って
武器にはならず、しかも周りの喧騒に直ぐにかき消されてしまったのでした。


戦場での私の声と言葉は無力でした。


それでもっと力のある人はいないのか?神様の味方はいないのか?
と、見渡すと・・


戦いのあちこちで天からの光を受けて戦っている人達がいました。
その人たちの手には 剣 がありました。
その剣はその人が発する言葉?
(と言うよりもその人たちが発していたのは文字・文章でした)
(まるでペンは剣よりも強しをそのまま実体化したような光景でした)
そしてその人達を照らしている光は天からまっすぐにその人注がれ、さらに
その光の中には戦いを導く天使のように その人を援護している何人もの人が見えました。


それで、
(あの大きな宮殿に人がいなかったのはこのためだったんだ。
 皆、地上で共に戦っていたんだ)と、わかりました。


ですが、少し・・残念なことにも気が付きました。
それは・・
その人たちが(せっかく天からの祝福を受けている)のにそのことに気が付かず
自分一人で戦っている事でした。


私の目には
 (実力者だから援護など必要がないし・仕方がない・・ことだ)
と、写りました・・が、


これはこれで・・神様とイエス様にとっては失礼?といいましょうか
悲しみ?になりそうにも思えました。
(願わくは・・自分を応援し祝福を与え導いておられる神様とイエス様に 
 感謝の気持ちを持って戦ってほしいな)と。
(そうすれば・・もっと、力が与えらるのではないか)と。


そして、私は自分についても・・残念なことがあることに気が付きました。
それは・・
自分もイエス様に呼ばれ、この戦いに参加したはずなのに・・
残念なことに


  自分には天の光も注がれていなければ、自分を援護してくれる
  天使のような存在もありませんでした。


そう・・
戦場での私は
(お呼びではない 状態でした。
 それは・・当然の事でした。
 私はクリスチャンでもないし、
 原理講師でもないし、巡回師でもないし、指導者でもないし、
 人を導く牧会者でもありません。
 さらに・・私には・・
 原理講論を 聖書を 聖句を 丸暗記できるほどの頭もありませんでした。
 そう・・
 私の手には何の武器もありませんでした)


戦場で戦っている人達とは圧倒的な差が私にはありました。


そして、


こんなところで戦うなんて私には無理・・


と、思っていると・・


イエス様の言葉が聞こえてきました。
それで天を見上げると・・私は瞬時に元の大広間に戻っていました。
それと同時に、イエス様の言葉がはっきりと私の耳に届きました。
「私には無理です」そう言った私に、


イエス様は


「そんなことはわかっている」


と、仰っておられたのでした。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つづく